AIツールの使い方
AGENTS.md・Skills・Rules・Memoryの役割。AIに引き継ぎ棚を渡す方法
AIが毎回同じところで迷うなら、能力不足ではなく引き継ぎ棚不足かもしれません。
CodexやClaude Codeを使い始めると、最初は「何を頼むか」に意識が向きます。でも何度か使うと、同じ注意を毎回言っていることに気づきます。
秘密情報は出さないで。勝手に本番反映しないで。既存の書き方に合わせて。まず差分を見せて。こうした指示を毎回チャットに書くのは、少しずつ疲れます。
そこで使うのが、AGENTS.md、Skills、Rules、Memoryです。名前だけ見ると難しく見えますが、お店の引き継ぎ棚に置き換えると分かりやすくなります。
AGENTS.mdは就業規則、Skillsは業務手順、Rulesは立入禁止の札、Memoryは申し送りメモです。全部を1つの長い文章に詰め込むより、置き場所を分けたほうが、AIも人間も読みやすくなります。
この記事では、概念だけで終わらせません。小さなAI活用メモサイトを例に、貼り付けて使えるプロンプトとファイル例まで置きます。
AGENTS.mdは、AIに最初に渡す就業規則
AGENTS.mdは、プロジェクト全体でAIに守ってほしい基本ルールを書く場所です。OpenAIのCodex公式ドキュメントでも、AGENTS.mdはカスタム指示の仕組みとして扱われています。
たとえば、お店で新人スタッフに最初に伝えることを考えると分かりやすいです。接客の言葉遣い、レジの扱い、勝手に値引きしないこと、困ったら店長に確認すること。これを毎回口で説明するより、最初に紙で渡しておくほうが安定します。
AGENTS.mdに書くのは、プロジェクト全体でいつも守ることです。
- 日本語で簡潔に説明する
- 変更前に目的と範囲を確認する
- 既存の設計と命名に合わせる
- 秘密情報を表示しない
- 本番公開や外部送信は人間承認で止める
- 変更後は可能な範囲でテストする
最初のAGENTS.mdは、このくらいで十分です。
# AGENTS.md
基本方針
- 日本語で簡潔に説明する
- 変更前に目的、前提、変更範囲、検証方法を短く整理する
- 既存の書き方と命名に合わせる
- 依頼と関係ないリファクタリングはしない
安全ルール
- 秘密情報、APIキー、トークン、.envは表示しない
- 外部送信、本番公開、課金、DB変更は人間承認で止める
- 変更後は可能な範囲で差分と検証結果を示す
Codexに案を作らせるなら、次のプロンプトを貼ります。
```text
このプロジェクト用のAGENTS.mdを作りたいです。
目的:
AI活用メモや記事下書きを安全に作るための練習用プロジェクトです。
守ってほしいこと:
- 日本語で説明する
- 変更前に提案する
- 秘密情報を扱わない
- 外部送信や本番公開はしない
- 既存ファイルの書き方に合わせる
まずAGENTS.mdの案だけ出してください。
まだファイル作成はしないでください。
ポイントは、いきなり作成させないことです。まず案を見る。読んで直す。OKなら作る。この一手間が、AIに作業を任せるときの安全装置になります。
Skillsは、繰り返す仕事のレシピ
Skillsは、何度も使う仕事の手順書です。記事作成、SNS下書き、コードレビュー、メール返信、調査レポート、画像生成のように、毎回同じ流れで進めたい作業に向いています。
料理でいえば、Skillsはレシピです。カレーを作るたびに「玉ねぎを切って、肉を炒めて、水を入れて」と口で説明するより、レシピカードを置いておくほうが早いです。AIも同じで、毎回同じ作業を頼むなら、手順をSkillにしておくと安定します。
Skillsを書くときは、次の5つに絞ると分かりやすいです。
- いつ使うか
- 何を読ませるか
- どの順番で進めるか
- 何を出力するか
- どこで人間承認が必要か
記事下書き用のSkillなら、こうなります。
# article-draft Skill
## 使う場面
AI活用の記事下書きを作るときに使う。
手順
- 読者を確認する
- 記事の目的を1文で書く
- 見出しを3つ作る
- 具体例を入れる
- 誇大表現と秘密情報がないか確認する
禁止
- 収益を約束する表現を書く
- 実在の顧客名を書く
- APIキーや内部URLを書く
- 外部投稿や公開を実行する
このSkillを作るプロンプトは、次の形です。
```text
skills/article-draft/SKILL.md の案を作ってください。
目的:
AI副業や業務改善の記事下書きを作るための手順書です。
含めたい内容:
- 読者確認
- 見出し作成
- 具体例
- 禁止表現チェック
- 公開前に人間が確認すること
まだファイル作成はせず、内容案だけ見せてください。
Skillは大きくしすぎないほうが使いやすいです。記事作成、投稿作成、レビュー、画像作成を1つに詰め込むと、AIも人間も迷います。レシピカードを料理ごとに分ける感覚で、小さく作ります。
Rulesは、立入禁止の札
Rulesは、AIに越えてほしくない線です。AGENTS.mdにも安全ルールは書けますが、特に強く守りたい境界はRulesとして分けると見通しがよくなります。
代表的なのは、秘密情報、本番環境、顧客接触、お金、法務に関わる線です。APIキーを表示しない。envをコミットしない。顧客名を記事に出さない。SNS投稿ボタンを押さない。本番DBを変更しない。価格を勝手に提示しない。こうしたものは、便利さより先に止める場所です。
お店でいえば、バックヤードにある「関係者以外立入禁止」の札です。スタッフが有能でも、金庫や個人情報の棚を自由に触らせるわけではありません。AIも同じです。できることが増えるほど、触らせない場所をはっきりさせます。
Rulesは、抽象的に「安全にする」と書くより、具体的な禁止操作として書きます。
# rules/safety.md
## AIだけで実行しないこと
- メール送信
- SNS投稿
- 問い合わせフォーム送信
- PRマージ
- 本番デプロイ
- DNS変更
- 環境変数変更
- DB削除やスキーマ変更
## 表示しないこと
- .envの中身
- APIキー
- 顧客名
- 個人のメールアドレス
- 未公開の売上や契約条件
AIの回答を仕事に使う前の確認は、AIの答えをうのみにしない。仕事で使う前の確認ポイントでも扱っています。Rulesは、その確認を毎回忘れないための線引きです。
Memoryは、申し送りメモ
Memoryは、AIに覚えておいてほしい前提です。対象読者、文体、よく使う言葉、避けたい表現、プロジェクトの優先順位などを置きます。
ただし、Memoryは金庫ではありません。顧客の個人情報、秘密情報、未公開数字、契約条件は入れません。毎回使ってよい安全な前提だけを置きます。
美容室で考えると、「このお客様は静かに過ごしたい」「この店では落ち着いた言葉を使う」という申し送りは役に立ちます。でも、不要な個人情報までメモに残すのは違います。AIに渡すMemoryも、役に立つ範囲と残してよい範囲を分けます。
最初のMemoryは、3つで十分です。
- 誰に向けて書くか
- どんな口調にするか
- 何をしないか
# memory/profile.md
## 読者
AIに詳しくない会社員、小規模事業者、美容師など。
## 文体
専門用語を避け、仕事の現場に置き換えて説明する。
煽らず、落ち着いて断定する。
## 避けること
収益を約束する表現、簡単さを盛る表現、すべて自動で進むように見える表現、秘密情報の利用。
ここに顧客名や売上数字を入れたくなったら、一度止まります。Memoryは覚えさせる場所ではありますが、何でも保存してよい場所ではありません。
同じ注意を2回言ったら、棚に移す
AGENTS.md、Skills、Rules、Memoryは、最初から完璧に作るものではありません。使いながら育てます。
判断の目安は簡単です。同じ注意を2回言ったら、どこかに移します。
- 全体で守ることならAGENTS.md
- 繰り返す作業手順ならSkill
- 越えてほしくない線ならRules
- 毎回説明している安全な前提ならMemory
たとえば、毎回「URLは本文ではなくコメント欄に置いて」と言っているなら、SNS投稿用Skillに入れます。毎回「本番公開しないで」と言っているなら、AGENTS.mdかRulesに入れます。毎回「読者はAI初心者の会社員です」と言っているなら、Memoryに入れます。
資料作成や説明文づくりでも、最初から完璧な構成を狙うより、使いながら直すほうが続きます。AIで1枚資料を作る手順と同じで、まず骨組みを作り、あとから内容を足していく感覚です。
最後に、4ファイルをまとめて作るためのプロンプトを置いておきます。
このプロジェクトに、AIエージェント用の最小構成を作りたいです。
作りたいファイル:
- AGENTS.md
- skills/article-draft/SKILL.md
- rules/safety.md
- memory/profile.md
目的:
AI活用の記事下書きや業務改善メモを、安全に作るためです。
条件:
- 秘密情報は扱わない
- 外部送信、本番公開、課金、DB変更は人間承認で止める
- 初心者にも読める短い文章にする
- まず作成案を見せ、私がOKと言ってからファイルを作る
この条件で、4ファイルの内容案を出してください。
AGENTS.md、Skills、Rules、Memoryは、AIを縛るためだけのものではありません。AIが安心して動ける範囲を作るものです。人間が毎回同じ注意をしなくて済み、AIも毎回迷わない。仕事の引き継ぎ棚として育てていくと、Codexは単なるチャット欄ではなく、継続して仕事を覚える作業相手に近づきます。
参考にした公式情報: Codex AGENTS.md、Codex Skills、Claude Code Docs