AIツールの使い方

AIで資料の下書きを作る。白紙からの時間を減らす手順

白紙から資料を作るのがいちばん時間がかかる。そこをAIに任せます。

資料を作ろうとして、何も書いていないスライドを開いたまま、十分も二十分も止まっていた。そんな時間がいちばんもったいないと、うすうす感じている人は多いと思います。中身は頭の中にあるのに、最初の一枚をどう組み立てるかで手が動かない。書き始めさえすれば早いのに、その書き始めがいちばん重い。

ここをAIに肩代わりさせると、止まっていた時間が動き出します。気をつけたいのは、完成品を作らせようとしないこと。AIに頼むのは、あくまでたたき台です。下書きをAIに、仕上げを自分に、と役割を分けるだけで、資料づくりの体感がだいぶ変わります。

いきなり全部ではなく、構成だけ頼む

最初にやることは、中身を埋めることではありません。骨組みを先に決めることです。

「この内容を伝える資料の構成を、見出しだけで五枚ぶん出して」と頼みます。ここで本文まで書かせないのがコツです。見出しだけなら、出てきたものを眺めて、順番を入れ替えたり、いらない一枚を消したりが一瞬でできます。骨組みが先にあると、あとは枠を埋めるだけになるので、白紙を前にした迷いが消えます。

家を建てるとき、いきなり壁紙を選ぶ人はいません。まず間取りを決めて、それから部屋ごとに中身を入れていきます。資料も同じで、間取りにあたる構成を先に固めると、あとの作業が迷子になりません。

このとき、頼み方が雑だと骨組みもぼやけます。何を伝える資料なのかを一言そえるだけで、返ってくる構成の精度が変わります。頼み方そのもののコツはAIへの指示のコツ。頼み方を変えるだけで答えが変わるにまとめているので、構成がうまく出てこないときに読み返してみてください。

入口を1つに絞る見本を1つ作る無理のない量にする

一枚ずつ中身を足していく

構成ができたら、そこから先も一気に進めません。一枚ずつ埋めていきます。

「一枚目の中身を、箇条書きで三つ」のように、対象を一枚に絞って頼みます。一度に全部の中身を作らせると、どの一枚も同じトーンの、うすい文章になりがちです。一枚ずつ向き合わせると、AIはその一枚に集中するので、中身が具体的になります。

現場では、ここで欲張ってしまう人が多いです。早く終わらせたくて「全ページの中身を一気に出して」と頼む。すると、見た目はそれっぽいけれど、どこも当たりさわりのない資料が返ってきて、結局ぜんぶ書き直すことになります。急がば回れで、一枚ずつのほうが手直しが減ります。

埋めながら、構成のほうも直していって構いません。三枚目を書いていて「この話は二枚目に入れたほうが自然だ」と気づいたら、その場で順番を変える。構成は最初に決めたら終わり、ではなく、中身を入れながら整えていくものだと思っておくと楽です。

一枚に絞るときは、伝える数も絞っておくと質が安定します。「箇条書きで三つ」のように上限を決めて頼むと、あれもこれもと盛り込んだ長い一枚にならずに済みます。スライド一枚に言いたいことを五つも六つも詰めると、見る人はどれが大事か分からなくなります。一枚一メッセージくらいに割り切って、AIにもその縛りで出してもらうと、あとで削る手間が減ります。

1入口を決める2小さく作る3続けて広げる

相手と目的を最初に伝える

同じ中身でも、誰に見せる資料かで、ちょうどいい言葉づかいは変わります。ここを伝えずに頼むと、誰に向けたものか分からない、ぼんやりした資料になります。

「経営者に向けて」「その分野をはじめて聞く人に向けて」と相手を足します。あわせて、何のための資料かも伝えます。提案なのか、報告なのか、社内の共有なのか。目的が提案なら相手の判断材料を厚くしますし、報告なら事実と結果を先に置きます。AIは伝えられた相手と目的に合わせて、言葉の硬さや説明の量を調整してくれます。

相手の伝え方は、肩書きだけでなく、その人がどんな気持ちでその資料を見るかまで足すと、もう一段近づきます。たとえば「予算に慎重な相手に向けて」「導入をためらっている相手に向けて」と書くと、AIはその慎重さやためらいに応える置き方を選びます。同じ提案資料でも、押し切る構成と、不安を一つずつ消していく構成では、並べる順番が変わるからです。

手元でよくあるのは、自分の頭の中では相手がはっきりしているのに、それを書かずに頼んでしまうことです。毎日その仕事をしている人ほど、当たり前すぎて言葉にしない部分が増えます。そこをあえて一行書き出すと、出てくる資料が相手に向けたものに変わります。料理でいえば、誰が食べるかを聞かずに味付けを決めるようなものです。子ども向けなのか、辛いものが好きな大人向けなのかで、ちょうどいい塩加減は変わります。資料も、見る人を伝えてはじめて、ちょうどいい言葉に寄ってきます。

AIに下書きたたき台を出す人が確認・直す事実を確かめる完成自信を持って渡すAIは下書き。確認と仕上げは人がやる

仕上げは人がやる。ここは外さない

AIが出したたたき台は、そのままでは使えないことがほとんどです。最後の仕上げは人の仕事だと、はっきり線を引いておきます。

直すのは主に三つです。数字や固有名詞が合っているかの確認。言い回しを自分の言葉に寄せる調整。話の順番が相手にとって自然かどうかの見直し。AIはもっともらしい間違いをさらっと混ぜることがあるので、特に数字と名前は人の目で見てから出します。事実の確認をどう習慣にするかはAIの答えを、うのみにしないコツにまとめています。

赤ペンを入れる場面を思い出してください。部下が出してきた原稿に、いきなり満点を求める人はいません。ここを直して、ここはこう、とやり取りしながら仕上げていく。AIのたたき台も、それと同じ扱いでいいんです。下書きはAIに任せて、判断と確認は自分が握る。この分け方が、安心して使うための土台になります。

毎回ゼロから頼まないための備え

ここまでの流れに慣れてくると、次は頼み方を毎回ゼロから考えるのが面倒になってきます。構成を出させる頼み、一枚ずつ埋める頼み、相手と目的を伝える頼み。だいたい同じ型を繰り返しているはずです。

よく使う頼み方は、自分の手元に文章として残しておくと、次からは貼って書き換えるだけで済みます。場面ごとに使える頼み文の例は仕事で使えるAIへの依頼文テンプレ集にまとめてあるので、自分の仕事に合うものを下敷きにすると、最初の一歩がさらに軽くなります。

つまずきやすいところ

この手順でも、最初はうまくいかないことがあります。よくある止まりどころを二つだけ挙げておきます。

一つめは、最初の構成に納得がいかないと、そこで手が止まってしまうこと。構成は何度でも出し直せます。「もっと提案寄りに」「報告として並べ直して」と頼めば、AIは別の組み方を返します。一発で気に入る必要はありません。二つめは、AIが出した文をそのまま貼ってしまうこと。便利になるほど、確認をはしょりたくなります。けれど数字や名前の間違いは、資料を見せたあとで気づくと取り返しがつきません。貼る前に、事実の部分だけは自分の目を通す。この一手間が、相手の信頼を守ります。

構成だけ頼む、一枚ずつ埋める、相手と目的を伝える、仕上げは人がやる。この順番をひとつ覚えておくと、次に資料を開いたとき、白紙の前で止まる時間がぐっと短くなるはずです。

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