公務員AIキャリア準備室
公務員のスキルは副業でどう活きる?強みの棚卸しとAIとの組み合わせ方
毎日の仕事で当たり前にやっていることが、外では強みになります。
副業の準備を始めようとして、自分には何も売れるものがない気がして手が止まる。公務員の方からよく聞く感覚です。手に職があるわけでもないし、特別な資格で食べてきたわけでもない。役所の仕事なんて外では通用しないだろう、と思い込んでいる。でも、止まっている本当の理由は、力がないことではなくて、自分の力が見えていないことだったりします。
毎日やっていることほど、当たり前すぎて強みだと気づけません。誤解されない文章を書く。抜けのない手順で進める。難しい決まりを噛みくだいて住民に説明する。どれも訓練して身につけたものなのに、職場では空気のように扱われるので、価値として数えていない。その見えていない力を、いったん言葉にして並べてみる。それがこの記事の中身です。可否を判断する話ではなく、自分の持ち物を棚卸しする話だと思ってください。
先にお断りしておくと、ここでは法的な助言はしません。副業や兼業ができるかどうかの最終的な可否は、あなたの所属の規程と許可によります。このサイトがその可否を判断することはできません。なので、できるかどうかではなく、できるようになった日に使える材料を、今のうちにどう整えておくかを書きます。具体的な確認の進め方は公務員の副業準備で、最初に確認することにまとめてあるので、線引きから入りたい方はそちらを先に見てください。
文章を正確に書く力は、AIの下書きを直す目になる
公務員は、誰が読んでも同じ意味に取れる文章を書く訓練を積んでいます。一文に意味を二つ詰めない、曖昧な言い回しを残さない、根拠のない断定をしない。役所の文書では当たり前のことが、外に出ると意外なほど効きます。
この力は、AIと組ませたときに本領を発揮します。AIは文章を速く書きますが、平気で事実を間違えたり、それらしいだけの一文を混ぜたりします。手元では、AIに案内文の下書きを作らせて、おかしい箇所を赤ペンで直していくような使い方になります。たとえば、AIが「営業時間は10時から」と勝手に書き足してきたとき、それが本当か立ち止まれるかどうか。違和感に気づいて直せる人と、そのまま通してしまう人の差は、文章を正確に見る目があるかどうかで決まります。
たとえるなら、新人の書いた起案文を回ってきた決裁で読むときの感覚です。文章としては整っていても、数字の根拠が抜けている、ここの言い回しだと誤解される、と気づいて朱を入れる。あの目こそが、AIの下書きに向ける目とまったく同じものです。AIの文章はあくまで下書き止まりにして、公開する前に自分の目で確かめる。この姿勢は、AIに頼みっぱなしで失敗しがちな人との大きな差になります。出てきた文をそのまま使わず、頼んだ自分が最後に責任を持つ。役所で起案に名前を入れるのと同じ感覚です。
段取りを組む力は、作業を止める場所を見抜く力になる
申請を受けてから決裁を下ろすまで、抜けのない順番で回してきた経験。これは、どんな作業にもそのまま移せます。何を先にやり、どの工程で一度止めて確認し、誰の判断を仰ぐか。この感覚は、訓練していない人にはなかなか身につきません。
AIを使う作業でも、段取りの有無がそのまま仕上がりに出ます。手元では、いきなりAIに全部やらせるのではなく、どこまでを任せて、どこから自分が確認するかを先に決める形になります。たとえば資料を一枚作るとき、構成だけAIに出させて、中身の事実は自分で埋める、最後の通し読みは人がやる、という区切り方です。止める場所を決めておかないと、AIが作ったものを丸ごと信じて、間違いごと外に出してしまう。役所の手続きで「ここは課長確認」と工程を切ってきた人なら、この区切りは自然に引けるはずです。
引き継ぎノートを思い浮かべると分かりやすいです。次の担当者がつまずかないように、どの順でやるか、どこで止まるかを書き残しておく。あの整理の感覚を、AIとの作業手順に持ち込むだけです。手を動かす前に順番を決める癖がある人は、それ自体がもう武器になっています。どこまでをAIに任せて、どこから自分が確認するか。その線を先に決めておくほど、後で慌てて手戻りする時間が減ります。
ルールを読み解く力は、新しい道具を安全に試す力になる
要綱や規程を読み慣れている人は、決まりごとの理解が速いです。長い条文を前にしても身構えず、どこに何が書いてあるかを落ち着いて拾える。この読む力は、新しいAIツールを触るときにそのまま効きます。
新しい道具には、使ってよい範囲や、入れてはいけない情報の決まりがたいてい添えられています。手元では、利用規約や注意書きを面倒がらずに一度読んで、どこまでが安全圏かを自分で線引きする動きになります。たとえば、職場の情報や住民の情報をうっかり入力しないか、どこに線を引くか。規程を読み慣れた人ほど、この線引きを慎重にできます。新しいツールに飛びついて、知らないうちに危ない使い方をしてしまう人とは、ここで差がつきます。
公開された資料を読んで、使ってよい範囲を見極める。これは役所で毎日やっていることそのものです。練習の題材も、職場の資料ではなく公開情報だけにそろえると、服務を守りながら安心して手を動かせます。何を題材にすればいいか迷ったら、公開情報だけでできる、AI練習メニューに具体的な組み立て方を載せています。
棚卸しした力は、所属が分からない形でまとめておく
ここまでの三つの力は、頭の中に置いたままだと活きません。できるようになった日に見せられるよう、形にして残しておくと後で役立ちます。
ただ、まとめ方には気をつけたいところがあります。どこに所属しているかが分かる情報は入れないことです。実在する職場の事例や、内部で見聞きした話、所属が特定できる固有名詞は避けます。代わりに、架空のお店を想定してチラシ文を書いた、公開データを使って簡単な資料を整えた、といった形にすれば、所属を出さずに腕前は伝わります。文章を正確に直した、段取りよく仕上げた、その過程ごと一枚にまとめておくイメージです。
並べ方も、完成品だけをきれいに置くより、手元では、最初のAIの下書きと、自分が直したあとの文を並べて見せる形にすると伝わりやすくなります。どこが事実と違っていたか、どの順番で作業を区切ったか。その直した跡こそが、棚卸ししたい力そのものだからです。たとえば、架空のカフェの案内文をAIに書かせて、営業時間や場所の書き方を整えた一枚があれば、文章を見る目と段取りの両方が一度に伝わります。完璧な成果物より、考えた跡が残っているほうが、力の出どころは見えます。
こうしてまとめた作品集を、副業の世界ではポートフォリオと呼びます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、自分にできることを言葉より先に見せてくれる一枚のページ、くらいに考えておけば大丈夫です。中身の作り方はポートフォリオってなに?で説明しています。練習は公開情報と架空の題材だけで行い、できるかどうかは自分の所属の規程と許可で確かめる。この線を守りながら棚卸しを進めれば、許可が下りた日も、退職を迎えた日も、磨いてきた力をそのまま持ち出せます。